家づくりコラム

【環境にやさしい家づくり】
脱プラスチックの家〜住宅建材篇〜

近頃、プラスチックゴミの問題が深刻になっています。住宅の建築材にもプラスチックは多く使われています。とくに床材については、プラスチック製のタイルがまだまだ主流、というのが現状です。シノザキでは、これをなんとか少なくして、自然のものに置き換えていきたいと考えています。今回は、これからの時代にふさわしい建築材料について考えます。

 

住宅とプラスチックは、相性がいい?

プラスチック問題が大きくなる以前から、永く住む家にはできるだけ自然の素材を使いたい、というお客様が多い傾向にありました。環境に配慮してというよりは、むしろお客様の趣向であったり、家のことを考えた選択であったり、という印象です。

プラスチックは安価で、床材では抗菌、消臭など、機能性の高いタイルもたくさん出ています。自然な木目を表現した美しい製品もあり、デザインの自由度が魅力です。けれども足触りは冷たく、リフォームやリノベーションの際にはプラスチックの廃棄物が発生する点も気になります。無垢材のように経年によって味わいや深みが増すことは期待できず、質感のよさも求められませんので、愛着が生まれにくいのも寂しいところです。住宅のように長い年月を過ごすものに、本来プラスチック素材は馴染まないのかもしれません。

しかし現在、とくに水まわりの床には、プラスチック製のタイルが多く用いられています。これを天然の素材に置き換えることはできないのでしょうか。

 

無垢材は、水が苦手。

建築の室内仕上げ材は工業製品がほとんどで、いちばん大きな面積を占めるのは床、壁、天井です。

このうち床材には、シノザキの場合、ほとんどの住宅で無垢を使用しています。しかし無垢は水に弱いといわれる素材です。したがって水濡れや水はねが起きやすいキッチン、洗面脱衣室、トイレなどは、フロアタイルというプラスチック系の床材を使用するケースがほとんどです。クッションフロアよりも硬質なフロアタイルならば見ための高級感はありますが、素材は塩ビタイルやPタイルであり、プラスチック製です。ここからの脱却をめざしたいのです。

では自然由来の素材でつくられたシート系の床材には、どんなものがあるでしょうか。

 

水を通さずエコな、コルク材。

コルク樫という木の皮を原料とするコルクタイルは、環境にやさしい天然素材です。20年ほどかけて成長したコルク樫の、厚くなった皮を剥いで圧縮した床材がコルクタイルです。コルク樫の皮は10年弱で再生するため、木そのものを伐採することなく樹皮を長期的に得られます。一度製品化されても、細かく粉砕して違う製品に再利用することもできるという、リサイクル可能なエコ素材なのです。

弾力性に優れているため足触りがよく、水をこぼしても内部に水分が浸透しにくく、早く乾きます。食器を落としても割れにくいので、キッチンなどの水まわりにたいへん適した素材といえるでしょう。

また、やわらかくあたたかみがあり、調湿性も高く、湿気のある季節でもベタつきません。写真はロフトの床にコルクタイルを使用した例です。子供が思いっきり遊んでも、衝撃音が抑えられます。夏はからっと快適で、冬はやわらかいあたたかさがあるのも魅力。デザイン性も高いので、ナチュラルな空間づくりに適しています。

一方、紫外線で色褪せしたり、傷や家具の跡がつきやすかったりというデメリットもあります。水まわりだけに採用したり、子ども部屋の一部に採用したり、という使い方もおすすめです。

 

水まわりの床材に適した、その他の天然素材。

もうひとつ、今注目度が高まっている素材に、リノリウムがあります。リノリウムとは、いかにも人工的な名称ですが、亜麻仁油に植物の繊維、石灰石、木粉、コルク、色素などの天然素材を混ぜてつくられる建材で160年以上の歴史があります。イギリスで発明された後、世界中で普及しましたが、製造にも施工にも時間と手間がかかることからプラスチック製の建材に取って代わられました。最近になって、環境への配慮やシックハウスの問題で、再注目されています。プラスチック素材よりも摩擦の抵抗が大きく滑りにくいことから、転倒を防ぐ目的で、おもに病院の床材に採用されています。また、バレエの練習場やスタジオで使われることも多いといいます。プラスチック素材よりも値段は高くつきますが、色素を混ぜられるため豊富な色や模様のデザインがあります。また、天然素材ならではの、抗ウィルス、抗菌、脱臭やハウスダストが起きにくいなどのメリットがあります。

しかしこのリノリウム、基本的にはモルタル下地にウレタン系の糊で施工することを前提にした商品であり、木の下地への施工は推奨されていません。下地の影響を受けやすいため、木材の動きや温度変化による伸び縮みに耐えられず、割れや剥がれが起きやすいのです。シノザキの場合は、下地は木材であるため、使用できません。

施工性も悪く、曲げたりすると簡単に割れが発生するため、キッチンや化粧台等の器具を設置する前に施工しなければなりません。施工性とメンテナンスなどの問題をクリアしたリノリウムが、開発されることを期待します。

他に天然素材の床材としては、サイザル麻やココヤシの織物があります。猫が寝ているのはサイザル麻のカーペットですが、タイル状のものもあります。コスト的にはプラスチック系のPタイルよりも割高になりますが、ザラッとした足ざわりの床材で、耐久性があります。断熱性、調湿性などにも優れており、脱衣室や洗面室にはよさそうです。

 

断熱材ウッドファイバー×壁紙アースウォール

 

シノザキでは断熱材にウッドファイバーという天然素材を使用します。ウッドファイバーの特徴や採用する理由については、【低エネルギーで快適な家】北海道の一級建築士が考えるこれからの高性能住宅。で詳しく紹介しました。ウッドファイバーの最大の特長といえば、高い蓄熱性に加え調湿機能も備えていることです。この機能を有効に活用するために、室内の壁を覆う仕上げは、調湿性のある素材を採用します。

アースウォールは、珪藻土(けいそうど)パウダーを配合した紙の表面に、シラス(火山堆積物)を塗布した壁紙です。一般的なビニールクロスに比べ施工がむずかしいうえ単価も上がりますが、ウッドファイバーの蓄熱・調湿機能が室内で存分に発揮され、快適性向上や省エネに貢献します。また、風合いが塗り壁のようにしっとりとしたイメージになるため、採用するお客様が多くいらっしゃいます。ただし、クロスとクロスのジョイント部分(巾90㎝ピッチごとに入ります)は目立ちます。また、木の家は湿気や乾燥で絶えず動くため、ジョイント部分は必ずといっていいほどズレが生じます。数年経って、家の動きが落ち着いた後なら、コーキングなどの補修も可能です。自然素材の恵みをいただくわけですから、大らかに考える必要があるでしょう。

 

雄大な自然の歴史を持つ素材。

なんといっても土独特の風合いが魅力的なのが、塗り壁です。写真はゼオライトの塗り壁で、職人さんがコテで仕上げています。風合いとして壁に残した手仕事のプロセスを楽しめることが、塗り壁の魅力です。こすると粉がパラパラと落ちますが、剥離した部分が目立つ場合にはご自身で補修できるよう、お客様には塗り壁素材の粉末をおわけしています。水で少しずつ溶いて、気になる箇所に重ねればOK。また、少しの汚れならば、歯ブラシを使って落とすことができます。

ビニールクロスの場合は、はがれや汚れが付着すると気になります。使い方にもよりますが、20年ほど経過すると、張り替えが必要になる場合があります。対して自然素材の塗り壁は、時間が経つと多少はがれたような箇所も味わいになり、生活に馴染んでいくと思います。

ゼオライトは、消臭、調湿という特徴を持っています。天然素材100%なので、化学物質に敏感な方にとっても安心な材料です。写真の塗り壁の原料は、北海道の仁木町で採掘された鉱物。今から1000万年以上も前の時代に、大量の火山灰が堆積してできた地層が、時間をかけて組成変化したものです。

 

前出のアースウォールに使われている珪藻土、シラスも、もともとは塗り壁の素材です。

ゼオライトと同じく消臭、調湿機能を持つ珪藻土は、海や湖の底に沈積した藻が長い年月で分解し蓄積した堆積岩を原料としています。珪藻土の使用にあたっては、シノザキが加盟する団体が国に申請している補助金制度を利用できる場合があります。対象のお客さまが家を建てる際、稚内産珪藻土を1袋以上購入し、塗り壁の材料として使用することが条件のひとつです。

また、ゼオライトや珪藻土よりも土っぽい力強さのあるシラスは、鹿児島から宮崎県南部に広がっているシラス台地で産出された天然素材を使った材料を使用しています。25000年前の火山噴火で発生したマグマが、火砕流となって堆積したものです。

こういった雄大な自然の歴史が背景にあることも、塗り壁の価値のひとつではないでしょうか。

 

100%自然素材の壁は、床や梁などの無垢材とも相性がよく、空気環境が格段によくなります。シノザキのラディアント・サーキュレーション・システム(輻射熱循環システム)は、住宅の空気の流れをデザインした冷暖房機構です。このシステムでは大量の空気が床下を通過しますが、その空間に珪藻土を塗布します。つまりきれいな空気が家中をめぐります。

空気がきれいなことがポイントとなるシノザキの家づくりにおいて、脱プラスチックへの取り組みは不可欠です。今後も自然素材の探究を、続けていきます。

ラディアント・サーキュレーション・システムについては、シノザキの家づくり「低エネルギー」のページもご覧ください。

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