家づくりコラム

【暮らしの悩みに応えるデザイン】
住宅で解決する、家庭のゴミ問題。

家庭のゴミを分別していると、あっという間に溜まってしまうのはプラスチックゴミ!と感じる方は多いと思います。かさを減らしたいので、袋類をまとめたり同じ形状のものを重ねたりしますが、お惣菜やお弁当の容器は種類が豊富でなかなかうまくまとまりません。高級なお弁当ほど丈夫で、処分しにくいこともあります。また、飲食店の宅配やテイクアウト用の容器もかさ張ります。プラゴミ回収日がくる前に、ゴミ箱はパンパンになってしまうことも多いのではないでしょうか。

一方で、赤ちゃんや高齢者の紙おむつ、ペット用のシーツなどを消費するご家庭では燃やせるゴミが多くなります。家庭で出るゴミの多くは、生ゴミだといわれています。夏場は生ゴミの匂いも、大きな問題です。

今回は、なにかと悩ましい家庭のゴミ問題を、住宅ですこしでも解消する工夫について考えます。

 

多いのは、燃やせるゴミ?それとも、プラスチックゴミ?

子育て中のご家庭では、燃やせるゴミが多くなる傾向にあります。最初は、おむつなどの紙製品のゴミがよく出ます。離乳食などお子様用の食事づくり、お弁当づくりがあり、生ゴミの多い時期はしばらく続くことになります。

料理をすると、生ゴミだけでなく、プラゴミもよく出ます。野菜や果物の多くはパックに入っています。鮮魚や食肉専門店ではパックをせずに売っていることもありますが、スーパーではすべてトレーにのせて売られています。

 

一方、子育てが落ち着いて共働きになった場合、スーパーやデパ地下のお惣菜、お弁当のプラゴミが多くなる方も多いでしょう。容器を洗って乾かし、ストックする手間もかかりますが、帰ってから料理をするよりは楽なので、ついつい頼りがちになります。

丁寧な人では、容器を洗って乾かした後、細かく切り刻んで体積を減らす、という話を聞いたことがあります。週に1度しかないプラスチックゴミの回収日。匂いやスペースの問題に悩むご家庭は少なくないようです。

 

昨今、プラスチックゴミの問題が叫ばれるようになり、レジ袋やストローを断るのはすっかり習慣になってきました。しかしお惣菜やお弁当の方が、はるかにプラスチックを消費します。容器の形状を規格化し、丈夫で繰り返し使える素材に置き換え、容器代のキャッシュバックで回収し、洗って再商品化するなど、もっと積極的な取り組みが進むことを期待します。

 

プラゴミのほかにも、通販の利用が多い場合は、ダンボールがたまります。ダンボールをあけるとさらに商品の箱があり、その中にも小分けの箱や緩衝材が入っていることもあり、通販で買い物をするたびに大量の紙ゴミが出ます。

また、夫婦でよく晩酌をするというご家庭では、1週間分のお酒のビンや缶などの量が、こんなに飲んだのか?!という規模になります。家族がペットボトルの飲み物を買う習慣があれば、ゴミ箱はすぐにいっぱいになるでしょう。

生活習慣によってゴミの出方はさまざまですが、ほとんどのご家庭で、ゴミの管理に苦慮していらっしゃるようです。

 

各部屋のゴミ箱を排除する。

家を建てるときには、ライフスタイルや習慣、家族構成などを十分に聞き取りし、ゴミ箱の設置やストック方法などについて検討します。

子ども部屋など家中の居室にゴミ箱をひとつずつ設置すると、回収するとき意外と負担になります。ゴミ箱をおく場所を最低限にとどめ、日頃から家族がゴミを決まった場所に集める習慣をつけると、ゴミの管理がしやすくなります。

たとえば、燃やせるゴミのゴミ箱は、キッチンと洗面所を最低限とします(おむつやペットシーツなどがある場合は別途)。そしてキッチンをゴミステーションとして、プラゴミ、紙ゴミ、ビン缶ペットも、常日頃キッチンのゴミ箱に捨てるよう、家族に協力してもらうという具合です。

 

シノザキでは新築のほとんどのケースで、キッチンの背面収納にゴミ箱を組み込み、ここを家族のゴミステーションとする提案をしています。写真はキッチンメーカーの、背面用のカウンター式食器棚です。ピンクの部分はゴミ箱を置くスペースで、引出しが1段ついて下がオープンになる左サイドと、大きなゴミ箱がおけるよう引出しなしの右サイドを設けました。幅3m64cmというかなりゆったりとした事例ですが、ゴミが多い家庭ではこのように引き出しをなくし、ゴミ箱の設置スペースにすることも可能ですので参考になさってください。

 

省スペースで大容量のゴミ箱を選ぶ。

 

 

最近おすすめしているゴミ箱は、上の図のようにフタが中央から割れる観音開きのタイプです。ふた全体が持ちあがるタイプよりも上部に省スペースで、30Lのゴミ袋がちょうどよく収まる容量がプラゴミやビン缶ペット、紙ゴミなどに便利です。幅75cmや90cmの食器棚の下に3コ置くことができます。

それでも週1回しか回収日のないゴミが、ゴミ箱に入りきらないほど出るという場合は、一旦保管するバックヤードスペースを設けます。キッチンからカースペースに直接出られる勝手口や、食品庫などの収納場所などにゴミのストック場所を設ける方法があります。

プラゴミをバックヤードに保管すると、匂いが気になる・・・という方もいらっしゃると思います。きちんと洗うのが匂い防止にはいちばんですが、さっと洗ってキッチン用のアルコールスプレーをかけて乾かすようにすると、かなり抑えることができます。魚やお肉のトレーなどは、食洗機に入れて食器とともに洗ってしまうという方法もあります。ただし、食洗機によってはプラスチック類を洗えない、または推奨していない機械もありますので、必ず確認してからお試しください。

 

家族のゴミ事情に応えるデザイン。

プラスチックゴミが海に投棄され、海洋生物が苦しんでいるというニュースを見ることがあります。ゴミの問題は深刻さを増していることは間違いありません。焼却炉の性能があがり、ダイオキシン等の発生を抑えられるため、プラスチックゴミはすべて燃やしてしまおう、という自治体も増えているそうですが、プラスチックに代わる素材の開発や、そもそもプラスチックゴミを出さないようにする工夫も、同時に急ぐ必要があります。

シノザキでは、住宅に使用する素材を、できるだけ天然素材に置き換えようと努力を続けています。ご理解いただけるお客様も増え、環境にやさしい家は、着実に増えています。詳しくは、「脱プラスチックの家〜住宅建材篇〜」も、ぜひご覧ください。

 

プラゴミだけでなく、家庭から出るゴミの量は、むかしに比べると遥かに多くなっていると感じます。ゴミをめぐる悩みは、時代によって変わるかもしれません。しかしこの先もわたしたちは、生きていく限り、ゴミを出し続けます。家をプランニングするとき、そのご家族のゴミ事情に着目してデザインすることで、ゴミのわずらわしさから解放され、日々の暮らしはずっと快適になります。

ゴミの悩みなんて相談にのってもらえるの?と思うかもしれませんが、住宅のデザインは、暮らしの煩わしい問題を解決するためにあります。設計者にはぜひ、日頃から気になっているお悩みを相談することをおすすめします。

 

プラスチックが問題視される以前は、森林伐採が環境を破壊するといって、割り箸や紙製品が悪とされたことがありました。一時マイ箸がブームになりましたが、間伐材を使用するから割り箸は悪ではない、と覆ったことは記憶に新しいと思います。今では自然素材である紙製品は、エコなイメージです。家づくりにおいては情報に振り回されることなく、自分にとって、もしくは社会や自然にとって何がたいせつか考え、ほんとうにいいと思うものを選び取っていきたいですね。

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