家づくりコラム

【暮らしの悩みに応えるデザイン】
住宅建築にできる暑さ対策。

ここ北海道でも、近頃の夏は立派に暑いと感じます。今回は住宅建築にできる暑さ対策について考えてみましょう。

 

北海道は寒冷地として、寒さや凍結に強い住宅が求められてきた歴史があります。したがって北海道の住宅では、今でも冷房より暖房の方が重視されます。確かに冬寒い住宅は論外ですが、しかし今や、なかなかに夏も暑いのです。できるだけ脱炭素に配慮しながら、暑い夏を少しでも快適に過ごすことはできないものでしょうか。

 

庇を深くとった家。

建築にできる暑さ対策で、まず取り上げたいのが、庇を深くとるデザインです。庇を深くすると、夏場の日射取得熱を大幅にカットできることがあります。

シノザキ建築事務所の通常の家の場合、いわゆる軒の出は800~850㎜位。これに対して庇を深く取った実績では、1間(1820mm)のウッドテラス分+800mmに、4寸勾配(21.8度)の屋根をかけました。

 

たとえば夏至の頃(6月21日頃)、太陽はいちばん高い位置に上ります(札幌の場合は南中高度※70.4度)。対して、冬至の頃(12月22日頃)の太陽は、いちばん低い位置に留まります(南中高度23.6度)。つまり庇の深い家では、夏は陽射しが高い位置から差し込むため日光の遮断が期待でき、冬は陽射しが低い位置から部屋の奥まで入り込むため暖かいというわけです。土地の条件や方位によって庇を深くできない場合もありますが、実現可能な場合、陽射しの角度をしっかりと計算すれば、夏も冬もかなり省エネに貢献できるでしょう。また、雨でジメジメとした夏の日には、雨をより凌げるため窓があけやすく、涼しいという声もあります。昨今の北海道の夏を考えると、大いに取り入れたいデザインといえます。

※南中高度/太陽が真南にきて、いちばん高く上がったときの地平線との間の角度(国立天文台ホームページより

ただしどうしてもリビングは暗くなりがちなので、2階に光床を設けるなどの工夫が必要です。

 

窓からの熱の侵入を遮断する。

家の南面に大きな窓をつけたい。しかも、なるべくたくさんつけたい、というご家族は少なくありません。すると夏は暑くてとんでもないことに。いや、冬だって寒いわけです。家の中にいても、年中シミやそばかすが気になるかもしれません。家具やカーテンなどの日焼けによる劣化も早まります。

そこでシノザキが採用しているのが、国内最高クラスの断熱性能をもつ窓ガラス、エクセルシャノン社のトリプルシャノンUF-Lです。ブロンズやグリーンなどガラスに色が入っているものはとくに日射遮蔽に優れていますが、より自然な屋外の風景を楽しんでいただくためにクリアタイプをおすすめしています。

このガラスはESクリアガラスといい、冬には日射熱を取り入れたいけれど、夏には断熱効果が高い方がいい、という2点を両立させている点がとくに優れています。

株式会社エクセルシャノン https://www.excelshanon.co.jp/

 

ほかにも、夏の日中は、遮熱性能の高いロールスクリーンを降ろしておくのも効果的です。ブラインドなど窓まわりの製品をつくる株式会社ニチベイの遮熱ロールスクリーン「フェアフレクト遮熱」は、1年間取り付けた場合、44%節電、CO2排出量では371kg削減できるといいます(コンピューターシミュレーションによる評価、ロールスクリーンなしとの比較資料)。

また庇の代わりに、リビングの大きな窓にかかるよう屋外にキャンプ用品のタープをかけて夏を過ごすご提案をしたこともあります。いずれも取り付けることで、紫外線カットと省エネ効果が期待できます。

 

エアコンを使わない、冷暖房システム。

シノザキ建築事務所では、新築の冷暖房に、ラディアント・サーキュレーション・システム(RCS 特許申請中)を導入しています。たとえば猛暑日、外気温が33.7度になったとき、室内はエアコンなしで27.5度(2020.8.19測定値/自社計測)に留まりました。省エネとエネルギーの地産地消に貢献し、ランニングコストを抑制。床下の冷気や地下水(地下水利用可能地域のみ)を利用した自然な心地よさを実現できるため、すべての新築住宅におすすめしています。

ラディアント・サーキュレーション・システムは、家全体が空気を動かす装置として働くようデザインした冷暖房のしくみで、空気がきれいなことと、家のすみずみまで澱みなく空気が行き届くことが重要です。サーキュレーション効果を存分に発揮させるために、以下の写真のように開口部を設け、基本的には締め切った場所をつくらず、すべての空間が空気の通り道になるようデザインしています。

したがって、極めて開放的な家になります。プライバシー重視という方には落ち着かない感じを受けるかもしれませんが、家族の絆がいっそう深まる住まいでもあります。新築をご検討の方は、「シノザキの家づくり〜低エネルギー〜」もご覧ください。

 

エアコンを最小限に、効率よく併用する。

ところで、地球温暖化の影響で今後も夏は暑いとの見通しから、新築時に限らず、北海道でもエアコンを設置するお宅が増えています。

今年は国も、早めのエアコンの点検を推奨しています。暑くなってから故障に気づいても、修理業者の対応が追いつかない、または、いっそ買い替えようと思っても販売店に在庫がないといった状況も予測できます。

海外のロックダウンの影響もあり半導体不足はあいかわらずで、エアコンの製造台数にも影響が出ているようです。早め早めに対策をしておきたいものです。

 

ラディアント・サーキュレーション・システムを導入したご家庭でも、昨年あまりに暑い日には、さすがにエアコンを使ったというご家庭もありました。今後、北海道の気候も変化し続けるかもしれません。補助的にエアコンを設置しておく、あるいは後から設置できるようにしておくと安心かもしれません。

本州などでは各部屋に1台ずつエアコンを設置することが多いようですが、北海道の家ではせめてリビングに1台。フル稼働させてもリビング以外の部屋は暑く、エアコンの近くは寒い、という状況になりがちです。その点、ラディアント・サーキュレーション・システムがあれば、エアコンの冷気が家じゅうを循環し室内の温度差をなくしていくため、エアコンの効率の最大化が期待できます。

 

冷房の効率がいい住宅は、冬の暖房の効率もいい、といえます。冬の暖房については、【低エネルギーで快適な家】薪ストーブ1台で、家中あたたかく。もご覧ください。初期費用はかかりますが、子供の代に残そうという家ならば、将来的には賢い選択となるでしょう。

住宅にできることはわずかではありますが、可能な限りの脱炭素に取り組むべき、と考えています。住宅供給数がささやかなシノザキではありますが、地球の環境問題に関心を寄せるお客様に、これからも設計の試行錯誤と、日々の冷暖房効率化をめざすイノベーションを提供していきたいと考えています。

 

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